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建築家 潤 の『独断と偏見』

日本文化の素晴らしさ その13 ~かすれ その1~

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お知らせがあります。今回「建築ジャーナル誌」より「『家づくりのキーワード「建築基準法」』の原稿を依頼され書き終えました。『中国地方の建築家28人とつくるあなたの家』の建築雑誌に掲載されています。一般読者向けに・・・との依頼で建築基準法を別な観点から書いたものです。もちろん当社の作品の紹介もありますので、興味のある方は是非ご購入下さい。

 さて前回の続きです。

みなさん「かすれ」という言葉をご存じだと思います。日常ではあまり頻繁に使つかう言葉ではありませんが、これが実はすごい文化なのです。欧米でも日本同様に「かすれる」は声・文字に付けて、誰でも「かすれ声」「かすれた文字」と使っています。

しかし、日本では日常生活の中でもっと多くの「かすれ」の文化があります。それは楽器と絵画(水墨画の類)に見ることが出来ます。欧米発の楽器は沢山ありますがその中に「かすれる音」が出せる楽器は無きに等しいと思っています。

打楽器では無理としても弦楽器の類でハープやバイオリン等、そしてピアノでは世界の第一人者と言えども「かすれた音」は出せませんし、トロンボーンやフルートの吹奏楽器でも無理です。楽器の特性で優しい音とか、なめらかな音や余韻を感じさせるものはありますが、いずれも音はハッキリしています。

ただ欧米の楽器の中で「かすれ」に近い音を感じるのはサキソホンとオーボエ、パンフルートだと思っていますが、この楽器から出る音は全て「かすれ」た音のように感じられます。逆に言えば「かすれた音」しか出せない楽器と言うことになります。

「かすれる音」とはビブラート(震える音)とは違いますので念のため申し添えておきます。日本で古来からの楽器といえば太鼓・鼓・三弦・琴・琵琶・尺八・篠笛・鈴の類でしょう。この内で「かすれた音」が出せる楽器は尺八と篠笛のみです。

尺八は楽器の特性そのものがサキソホンとオーボエによく似ていると思っていますが、尺八と篠笛、この両楽器はハッキリとした音と「かすれた音」の両方を出すことが出来る世界に誇る文化の高い楽器だと思うのです。
私が感じている「かすれ」の音には、楽器を通じてその音の中に「人間の悲哀や切なさ、むなしさといった無常観・死生観」を表現していると思えることなのです。残念ながらビブラートでは「無常観や死生観」を感じることが出来ません。
欧米ではこの「無常観や死生観」は曲で表現するということになるのでしょうが、日本では曲に加えて楽器でも表現できる文化を持っているということになります。

 人はこの世に生を受けると、死に向かって一直線の宿命を負っていて、自分の思い通りに回り道をしたり、寄り道をすることは許されていません。一生を生き抜いてゆくことがどれほど面倒くさくて辛いことか、この世に66億の人間がいれば、66億通りの顔と価値観に人生観、それぞれが似通っていることはあっても同一のものは皆無です。そんな中で自分の想いを貫き通して一生を終えようとすれば、どれほどの不要とも思える想いを巡らさなければならないのだろうか。

そこに自ずと「無常観や死生観」が湧いてくる。欧米の「我良し」の文化の中で生活していてはこの「無常観や死生観」はなかなか感じることは出来ないものです。

 絵画においては何百号の大きなキャンバスに多くの色を使った油絵の具を、重量にして何十キロと塗りたくってもこの「無常観や死生観」を表現した絵を見ることはできない。最後の晩餐や落ち穂拾いなど、絵の中にそれらしきを感じることは出来るかもしれないが、アジア(日本・韓国・中国)では水墨画でそれを表現してきて二千年以上の歴史があります。わずか墨一色の濃淡だけで、たかだか30センチ四方の紙に「かすれ」の手法を使い「無常観や死生観」いや森羅万象の世界に宇宙までをも表現することが可能な文化をもっています。

変な話をすれば、星を描いたり宇宙空間を描くことでは宇宙を表現したしたことにはなりません。それはただ空とその一部を表現したに過ぎず、宇宙とは宇宙観(何も解明されていないが、ただいろいろな星がどこにあると言う程度が判明しているだけで、その出自や存在そのもの、宇宙全体においてその星の役割・意義などまったく不明で不思議な世界、また果てのない空間であって未だに膨張していると言われている)をいいます。

みなさんはご存じでしたでしょうか、画家のピカソは元々写実の絵を描いていたのですが、江戸時代の代表作家の一人でもある、葛飾北斎の描いた浮世絵の「富岳三十六景」の影響を受けて彼は抽象画を描くようになってあのゲルニカを描いたこと。

ゴッホもゴーギャンも北斎の浮世絵に大きな影響を受けて大成したといわれています。一説によると、富岳三十六景のうちで特に有名な神奈川沖浪裏など、北斎は世界で初めて遠近法を使って絵を描いた作家であると言われています。

中には「いや、あれは遠近法ではなく、単なる誇張法だ」という輩もいるようですが、そのようなことはどうでもよろしい。要は世界に先駆けて、絵画の世界では、遠近法であれ誇張法であれ、初めての表現方法でもってあの浮世絵が描かれたと言うことです(描かれたとは言っても、版画です念のため)。
以前に建築家(ル・コルビジェやフランクロイド・ライト)の話をした時にも、彼らが大成した原点は日本の文化にあると言いましたが、絵画の世界も同じことが言えます。このように本当に日本の文化とは素晴らしいもので、世界に誇れるものなのです。 

もう一つ日本では着物の種類の生地の中に「かすり」があります。これは、はっきりしない模様に織られていることの良さを認めたもので、とても高級品として扱われてきました。欧米からは、はっきりしない文化、曖昧な文化と言われる日本の文化ですが、以前からお伝えしようとしているように、衣類を言えば着物、足袋、下駄、雪駄に風呂敷、建物なら土間に縁側、襖、障子に軒です。芸術関係では文学において漢字・ひら仮名、カタカナ、そして絵画や楽器の「かすれ」など世界に誇る文化です。

ありとあらゆる仕事や職種に就いている日本人全部が、もう一度日本の素晴らしい文化を認識してそれを日々の仕事や日常生活に取り戻して生かし、現在の誤った欧米輸入型価値観を正さねば本当に日本の将来(実は地球)は必ず無くなります。 

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